熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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新聞記事に見る札沼線の「突然死」

札沼線の北海道医療大学〜新十津川間を平成32年5月7日をもって廃止する旨の発表があったのは、一昨年(2018年)の12月21日のこと(JR北海道プレスリリース)。廃止日は、当初は3月末と報じられていましたが、GWまで走ればたくさんのお客さんが来てくれるだろうとの期待&顧客サービスから、連休いっぱい、運行されることになっていました。

もともと3月末で終わるはずだったから、ということなのか、廃止に伴って運行される代替バスは、4月1日から運行が始まっていました。4月1日から5月6日までの札沼線は、いわば、1ヶ月超にわたるさよなら運転であり、公共交通機関としての役割は、3月末で終わっていました。

4月3日には「札沼線 石狩当別〜新十津川間の運転計画について」と題した発表がありました(JR北海道プレスリリース)。4月11日以降は週末と休日を中心に通常は浦臼止まりの列車を新十津川まで延長運転すること、その期間は新十津川までの列車を2両編成とすること、5月3日から6日の間は4〜5両編成とすること、かつ、新型コロナウイルス感染拡大の予防対策として全車指定席で運転することが記されたリリースの最後には《新型コロナウイルス感染の状況等によっては、変更または運転を取り止める場合がございます。あらかじめご了承ください。》との文言が付されていました。

それから8日経った4月11日、北海道新聞の第1面に、《札沼線「道医療大―新十津川」 最終運行25日に前倒し JR検討》の大見出しが躍りました。
 

JR北海道は10日、5月6日の営業を最後に廃止予定のJR札沼線北海道医療大学―新十津川間の最終運行日を、連休が本格化する前の4月25日に前倒しする検討を始めた。5月6日までの大型連休中に道内外の鉄道ファンが沿線に押し寄せ、新型コロナウイルス感染拡大の危険性が高まることを避けるため。最終列車の乗客は沿線の4町民限定にする方向で調整する。
JRは最終運行に関する案を沿線の空知管内の月形町、浦臼町、新十津川町、石狩管内当別町に伝えており、感染拡大などの状況を踏まえた上で、最終運行日を近く判断する。
(北海道新聞2020年4月11日朝刊)


JR北海道から正式に発表があったのは、その4日後の4月15日の午後(JR北海道プレスリリース)。最終運行日は、新聞報道された25日よりもさらに1日早く24日。最後の1週間となる18日から24日までの間は4両編成で運行することとともに(これはこの間も書きましたが)《不測の事態により最終運行を繰り上げる場合があります》との文言があることが、ぼくは、とても気になってました。

その翌日、4月16日の北海道新聞朝刊、第4社会面。



記事の中には《島田社長は「命を守ることを最優先に考え、前倒しを決めた。最後の姿を見たい気持ちは分かるが、今回はぜひ自粛してほしい」と訴えた。》とあり、JR北海道の感染拡大防止に対する強い姿勢がうかがえます。

さらにその翌日、4月17日の北海道新聞朝刊、第2社会面。



「札沼線きょう最終便 道医療大―新十津川 緊急宣言で前倒し」という見出しは、見つけるのにちょっと苦労しました。国の緊急事態宣言が全国に拡大されるという大きなニュースに加えて、発表されたのが夜遅い時刻だったこともあってか、前日とは打って変わって、見出しこそ3段であるものの本文は非常に短い記事でした。

この記事が出る前日(4月16日)、JR北海道から「札沼線(北海道医療大学―新十津川間)最終運行について」のプレスリリースが出たのは、20時30分過ぎでした。この発表のタイミングを「首都圏から飛んでこられないギリギリの時刻を狙った」と推測するむきもあるようですが、単純に、国の緊急事態宣言の発令が遅かったから、こうなっただけでしょう。JR北海道の発表には《本日、国より発表があり、北海道が新型コロナウイルスに関する「緊急事態宣言」の対象地域となりました。大変残念でありますが、不測の事態に至ったと言わざるを得ず、さらに最終運行日を繰り上げますので、お知らせします。》とあり、国の緊急事態宣言を受けて決定したことが明記されています。国の緊急事態宣言が出たのは20時15分過ぎ、その直後にこのリリースが出たということは、国の緊急事態宣言が出たらすぐに発表すべく文書を用意していたということであり、仮に国の緊急事態宣言が18時だったら、最終運行日前倒しの発表ももっと早い時間帯だっただろうと思います。

最終運行日の前倒しと同時に、沿線4町のラストラン運行の中止も発表されているのだから、JR北海道が独自に決めたわけではなく、沿線4町との事前協議も必要だったでしょうし、当日(16日)のことを思い起こせば、ぼくのまわりでもお昼ぐらいから「北海道も国の緊急事態宣言の対象地域になるみたいだ」「今日の夕方には緊急事態宣言が出るようだ」「そしたらあれやらなきゃこれやらなきゃ」というモードになってましたから、急遽、さまざまな関係機関との調整が始まったのであろうことは想像できます。そこでまずやらなければならないのは広く利用者に伝えることであり(自社の提供サービスを急に取り止めるとなったらとにかくすぐに伝えなきゃいけないのは鉄道事業者に限らず世の中みんなそうでしょう)、首都圏の鉄道マニアの渡道を阻止するために発表を遅らせるなんてのは優先順位としてはかなり低い話です。その前日に、最終運行日の繰り上げ発表をした時点で、外出や往来の自粛要請を無視して集まってくるであろう人たちの存在は意識されていたでしょうから、いまさらそんなところを意識することはない、とにかく、早く伝えなきゃいけない、と考えるのが普通です。

最終運行日を24日とする発表の中でJR北海道が自粛を呼びかけていたうえ、結果的に最終運行日となった17日はそもそも国の緊急事態宣言の発令後で外出を控えることになっていたのだから、沿線住民以外の人が集まるのはあり得ないことなのに、最終列車は報道によると160人の乗客だったとのこと。18日から予定していた4両編成が間に合っていれば、160人なら「ちょっと混んでる」程度だったと思いますが、2両では座席数は130席ほどですから、160人がひしめき合った車内は密集空間です。窓を開けて走ったとはいえ、JR北海道の担当者は、この先2週間から3週間、気が気でないだろうと思います。

そういうことも考えると、昨日から札幌市内の大型店舗がことごとく休業に入ったのは、やむを得ないことなのでしょう。外出するなといっても、そういうことが起きてしまう以上、お店で働く人の他人との接触を減らすためにも、休むしかない。こんなことしてたら、いつになっても「収束」には向かわず(「終息」は何年も先のことでしょう)、次はいよいよ本当にすべての店舗が休業するなんてことになりかねないのですが…と、鉄道マニアの話とそれ以外の人の話を一緒にしたのは、だから鉄道マニアは!と言われるのがイヤだ、という本能が働いたのかも。

最終運行翌日、4月18日の北海道新聞朝刊。
1面の真ん中に新十津川の写真があって、「札沼線 前倒しの別れ」。



こちらは同じ日、4月18日の北海道新聞の夕刊。



1面を大きく使った記事を彩る伊丹カメラマンの写真には「樺戸連山をバックに、新十津川町の水田地帯を走る最終列車。もうこの光景を見ることはできない」とのキャプションが付いてますが、なんといってもまだ4月の半ば過ぎ、水田地帯といっても、北海道では、まだ、水は入っていません。

ところで、あの16日(というのはついこの間なんだが)の「空気」から想像するに、札幌市内の大型店舗が軒並み休業したことも含め、いろんなことの背後には、今回の一連の動きでは国に先駆けて強いリーダーシップを発揮している北海道知事の意向(を受けた道庁の意向)もあるのではないかと考えて(妄想して?)います。全国に先駆けて休校を決めたときの教育長が現役のままお亡くなりになったことへの無念の思いもあるでしょうし、2月以来の知事の会見を見聞きしてきた印象からすると、国の緊急事態宣言が出たのだからみんな休め!ぐらいのことを道が言ってきても不思議ではないように思います(発熱したまま飛行機に乗った人が発症した、という発表のときの知事の怒りのオーラはすごかったですよねえ<あれ見たときには、この知事はいろいろ言われてるけれどいざとなれば国とも戦うぐらいの気持ちを持ってるんじゃないか?と思ったものであります)。まあ、とにかく、今は誰かを批判してる場合じゃなくて、とりあえず言うことを聞いて、その範囲内で頑張りながら、さらに先の(たぶんこれまでとは大きく価値観の変わる世界の)ことを考えていきましょう。

 

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