熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
<< March 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 鉄道ジャーナル2019年4月号 | main | 6ヶ月前の東横インとフルマラソンの直前準備 >>

橋本治さん

21日の夜に北海道で大きな地震があって、と書くと、北海道の人からは「北海道で、じゃないよ!北海道のごく一部の地域だよ!」と言われそうなのですが、これが不思議なもので、そのときに北海道外にいると、北海道のそういう広さは十分にわかっていても、「北海道で」という枕詞を付けてしまいたくなるものなのですね、という話はさておき、とにかく、大きな地震があって、そのとき北海道内にいなかったぼくはその大きさが実感できなくて、家の中のあんなところこんなところがこんなことになっているのだろうなと想像しながら帰ってきたのですが、こんなに(とここに書いても読んでいる方にはわからんのですが)むちゃくちゃな本や書類の積み方をしているにもかかわらず、崩れていたのは、そりゃここは崩れるだろうなと思っていたところだけ、でした。

去年の9月6日の地震のときは、我が家で最も大きな本棚の中身がごそっと外に出てきたのだから、そのときに比べれば、今回は、ほとんど揺れなかったといってもいい程度、だったのでしょう。

そんな本棚の一角にある、橋本治コーナー。



橋本治さんの「ああでもなくこうでもなく」は、雑誌『広告批評』の1997年1月号から2009年4月号まで連載されていたもので、そのうちの2008年8月号の分までが6冊の単行本にまとめられています。ぼくは、この本を読んでいた頃は、小さな付箋をつねに携行していて、それを気になった箇所にペタッと貼り付けることをやっていたから、6冊の「ああでもなくこうでもなく」には、たくさんの付箋がついたままです。そして、これらの単行本は、発行元の出版社が会社を解散してしまったから、今や「入手不能」なのだと、その後に別の会社から出た「ああでもなくこうでもなく インデックス版」の冒頭の「『終わってしまったもの』にまえがきを書いても仕方がないんじゃないか、と思いつつ」に書いてあります。



橋本治さんの書いたものは、ぼく、そんなには、読んでないです。『ああでもなくこうでもなく』の全6冊(+インデックス版)が、すぐに取り出せる場所にあったり、『二十世紀』の上下巻がときどき参照する本のコーナーにあったりするのだから、ぼくの頭の中にそれなりの影響を与えているのだろうとは思いますが(このブログの文体がかなり橋本治チックであることはわかる人にはわかると思う)、けっして「熱心な読者」などといったものではないです。ましてや、橋本治さんの小説となると、ほとんど読んだことがない。

『結婚』は、数少ない、ぼくが読んだことのある橋本治さんの小説の一つ。



そして最新刊が『思いつきで世界は進む』。この本、最初に本屋さんで見たときは、こんな帯じゃなかったんだけど、先月の訃報を受けて、こういう帯になったようです。

ぼくの本の読み方は、最近、また、アナログ付箋方式に戻りつつあって(必然的に電子書籍から離れていくことになるため部屋が本で埋め尽くされる状態に戻ることにもなる)、この本も、付箋をペタペタやりながら、電車の中で読みました。どれもみな、ある部分だけ抜き出せば、当たり前のことを言っているに過ぎないように見えてしまうのだけれども、その「当たり前」を前提から疑ってかかって、徹底的に自分の頭で考えてそこへ達するのが橋本治の文章の気持ちよさです。だから、一部分だけを抜き書きすることにはどのくらいの意味があるんだろうか?とも思うのですが、付箋をつけたページのうち、最も大事なことだと思った部分を、ここに書き写しておきます(かような事情で、以下だけ見れば「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれませんが、そういうことではないので、ぜひ本を読んでみてください)。

《「民主的であろうとなかろうと、まともな社会は自分達が担うことによってしか成立しないから、その義務と責任を自覚する」ということからしかすべては始まらなくて、そういうことが「明けない夜はない」ということなんだろうと思い、それを放棄した時、誰の得にもならない長い夜は長い夜のまま続くのだろうと思う。》(『思いつきで世界は進む』p.185)

 

読書 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | - | -

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://work.kuma-i.com/trackback/1196060
この記事に対するトラックバック