熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
<< August 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 別府鉄道の保存車両修復プロジェクト | main | 言い訳付き蒸し暑さ >>

列伝シリーズ02「北斗列伝」

イカロス出版のシリーズ復活第二弾(第一弾は「あずさ」)。手にしたのが、たまたま、函館へ行く直前だったこともあり、せっかくなので、函館へ向かう特急スーパー北斗の車中でじっくり読みました。



写真中心のムックのようにも見えますが、図表を含め文字量も多く、とりわけ、全47ページにも及ぶ「特急北斗ものがたり」は読みごたえがあります。見出しを拾っていくと、第一部「特急『北斗』の時代」は「1965-1980 北海道で第3の特急として『北斗』が誕生」、「1980-1994 キハ183系の登場でサービスレベルを一新」と続き、第二部「特急『スーパー北斗』の時代」が「1994-2006 国内の在来特急で最速の特急へ」、「2006-2018 速度を落とし、より現実的なダイヤへ」。

その中でも、とくに読ませるのが、最後の「2006-2018」の章です。たとえば、こんな記述があります。

《時代が2000年代を迎えるようになると、鉄道の役割も、それまでとは大きく変わるようになった。(中略)高速バスの新規参入ラッシュが続いたのは1980年代後半から1990年代前半のことであり、1990年代後半には供給過多による非採算路線の淘汰という減少も生じるようになったが、数多くの事業者が参入した後では路線の減少は目立たず、長距離の移動を少しでも安い料金で行いたいと考える層にとっては、高速バス、夜行バスは必須のツールとなったのである。それは、今から40年前の若者が、均一周遊券に頼って全国を旅したのと似たような図式となり、特に若者層にとっては、航空機のような速達性も、高速バスのような経済性も、自家用車のような自由度もない鉄道は、利用の優先順位の低い乗り物というイメージが定着していったのがこの時代だったのである。もちろん、鉄道の側も、この事象に手をこまねいていたわけではないのだが、大幅な料金の値下げがあったわけでもなく、昭和30年代初頭に登場した鉄道車両のように、時代の先端をゆく設備が搭載されたわけでもなく、鉄道車両だけが備える十分な居住空間を活かした斬新なサービスが展開されることもなかった。》(p.49〜50)

辛辣ですが、言われてみればそのとおり。自分自身が、稚内(礼文島)への往復の手段としての鉄道に感じていたのが、あえて鉄道を選ぶことのメリットのなさ、でした。それでも鉄道が選択肢の一つとして残っていたのは、自分が均一周遊券で旅したかつての若者であったからなのでしょう。

この「2006-2018」の章は「特急列車は減速の時代へ」「JR北海道の曲がり角となった事故の頻発」「営業運転に就くこともなく姿を消したキハ285系」「特急『北斗』とキハ183系の終焉」と、厳しい現実を直視した内容となっているのですが(ほとんど走らなかったキハ285系の写真が複数掲載されているのは貴重です)、けっしてステレオタイプなJR批判に終始しているわけではありません。

《言うまでもなく、車両や軌道の保守には、いかに効率化が進められようとも、人間の力が必要とされる。国鉄時代には1万4,000人いたという北海道で働く鉄道員は、JR発足後にその半分にまで減らされたという。それはもちろん、経営の合理化を目指してのものであった。しかし、この特急「スーパーおおぞら」の脱線、炎上事故が起こった当時は、JR北海道で脱線事故や不祥事が続発していた。その発生の理由の一つが、行き過ぎた人員の削減であることも指摘されるようになった。限られた人数で保守を行うには、北海道という場所は広過ぎたのである。JRは民営の会社である。民営であるならば、利潤を追求することが責務とされるが、それは時に安全の管理とは相反しかねない事態をも生み出す。もし、北海道に国鉄時代と変わらない数の要員が配置されていたのなら、一連の事故は発生しなかったかもしれない。JRが発足した当時には見えにくかった問題点が露呈したのだった。》(p.52〜53)

同じイカロス出版の「名列車列伝シリーズ」16巻「特急北斗」は2002年5月刊。



前回の「特急『北斗』ものがたり」は1908年から始まっています。左の旧版が出たのはまだまだ明るい未来が描かれていた頃とあって、「ダイヤと軌道、高速化への挑戦」といった記事も掲載されています。これを機に、この旧版のほうも、ひさしぶりに、読み直してみようかと思います。
 

旅と鉄道 | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | - | -

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://work.kuma-i.com/trackback/1195814
この記事に対するトラックバック