熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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花咲線の魅力 再発見(2)

早朝に釧路駅を出る根室行きの列車は、かつては、札幌からの夜行列車の到着に接続する列車でした。現在は夜行列車がなくなり、釧路から始発の根室行きに乗るためには釧路に泊まるしかない、にしても、釧路駅5時35分発というのはあまりに早く、どうせ誰も乗ってないんだろうなと思っていたのですが、そんなことはなかった。

車内の様子

右側に集中しているのは、右側が眺めがよいから。みなさんよくご存知です。

この程度の人数ならバスで十分運べるだろう、これでは黒字にはほど遠いだろうという見方もありましょうが、ぼくは、むしろ、大型連休の期間中とはいえこの日は平日、それなのに早朝5時半過ぎの始発列車にこんなに乗っていることに驚き、しかも、厚岸で下車した1名を除く全員が(たぶん)旅行者だったこともあって、花咲線の観光鉄道としての可能性に希望を感じました。

この日の根室行き快速「はなさき」の車両は、流氷物語号仕様。

釧路駅で出発を待つ列車

外観が一般の列車とちょっと違うだけで華やかな気分になれて、それはとても嬉しいことなのですが、惜しむらくは、せっかく「はなさき」という愛称が付いているのに、その表示がどこにもないこと。

通常塗装の車両だと、行先に「快速はなさき」が表示されます。

快速はなさき の 方向幕

釧路を出た列車は、東釧路、武佐、別保と停車した後、宮脇俊三さんが40年近く前に書いていたように、丘陵地帯に差し掛かっていきます。現在の技術であれば一気に長いトンネルで抜けてしまうのでしょうが、釧路〜厚岸間の開通は100年以上も前、まだ大正時代の1917年12月ですから、別保から次の上尾幌までの間には、小さなトンネルが3つもあります。

別保トンネル(268メートル)


釧厚トンネル(213メートル)


尾幌トンネル(171メートル)


どれも、見るからに古い、味わい深いトンネルです(が、ゆえに、これを維持していくのは大変で、ひいてはそれが路線の存続問題に関わってくるのですが…)。このトンネルだって、観光資源になるかもしれない。

でも、やっぱり、ここの売りは、沿線の自然です。

自然といっても、この季節はまだ緑がなく、茶色っぽくてぱっとしない風景なんだよな…と思い込んでいたのですが、あらためて眺めてみると、この季節にしかないものがありました。

まずは、線路際のフキノトウ。



でも、ふきのとうは、札幌近郊だってあるよね…と言われたら、こっちはどうだ。

線路際の、ミズバショウ。



これ、写真がしょぼいですけど、線路から少し離れたところ(十分に見える範囲)には、あちこちに、ミズバショウの群落がありました。車窓から見えるミズバショウというのも、じつは北海道内ではそれほど珍しいものでもないのですが(すぐに思い出せるだけでも石北本線の網走〜呼人間や函館本線の大沼公園駅の裏など<ただし開花の時季はかなり違います)、こんなにあちこちに、たくさん、ミズバショウが咲いているのは、花咲線ぐらいかもしれません。

というのは、花咲線、釧路と根室の間って、なんとなく近いみたいですけど、かなり距離があるのです。釧路で根室までの切符を買うと、有効期間が2日間あって、途中下車もできる切符が出てくるぐらいに、遠いのです。早朝の5時35分に釧路を出て、途中の各駅の大部分を通過する快速列車でも、根室に着くのは8時01分。2時間半近くもかかるのです。だから、その分、見どころ満載なのです。

いやいや、ミズバショウといえば網走でしょう…と言うならば、これはどうだ。



これが今回の最大の発見。ヤチボウズ、漢字で書くと谷地坊主。NHKの「ダーウィンが来た」に出てくるヒゲじいが、もうそこらじゅうに、たくさんいるのです。これは、この季節でなければ見られない風景。釧網本線の釧路湿原の縁を走る区間でも見られますが、規模感と近さは、圧倒的に、花咲線の勝ち(価値?)です。

釧路から茶内までは、先日も書いたように近年も何度も乗っている区間ですが、この季節に乗ったことはなかったから、こんなにおもしろい風景があることは知りませんでした。

この日の夜、釧路で、ある方と会食したときに、「今回の最大の発見は花咲線の谷地坊主です!」と張り切って伝えたら、「この間来た鳥塚さんも同じことを言ってました」とのこと。そして、これはまったくの偶然なのですが、その翌日のいすみ鉄道社長ブログのテーマが、まさしく、この車窓風景の話だったのでした。

厚岸〜糸魚沢間の、厚岸湖から別寒辺牛湿原を通る区間は、ぼくが北海道内でいちばんすごいと思っている風景。よくこんなところに線路を敷いたよな〜と、通るたびに、思います。



その別寒辺牛湿原では、車窓にタンチョウを発見。



ただ、残念なことに、ほとんど誰も気づいてないんだ。乗っているのはほとんど(もしかすると全員)観光客だから「あ、タンチョウだ!」と叫んであげようかと思ったぐらい。花咲線の観光列車化プロジェクトではGPSを活用したアプリで4ヶ国語対応の観光案内が流れるとのことで、そのときにはここはもちろん第一級のポイントとして紹介されることと思いますが、こういうのは、アプリじゃ対応できなくて、やっぱり、ガイドが必要なんです(って、別にアプリを批判してるわけではないですよ<念のため)。

途中の区間ではエゾシカもたくさん見られたのですが、この季節は雪に覆われた冬と違って茶色い森の中のエゾシカはとても見つけづらく(それが保護色ってことなんですね)、初めて北海道に来た人ではおそらくわからない。車掌さんがいれば「エゾシカがいますよ」と案内放送を入れることも可能かもしれないけれど、ワンマン運転ではそういうわけにもいかず、さりとてそのために車掌を乗務させるのは本末転倒でもあり、やっぱり、ここも、ガイドがいるといいんだよな〜(で、いきなりそういうこともできないからアプリで、というのは、その第一歩として、素晴らしい取り組みだと思います)。

茶内から先は16年ぶりに乗る区間。



別当賀〜落石間の太平洋に接するビューポイント。



6月からの普通列車の観光列車化では、ここは徐行区間になる予定です。

落石は蛍ちゃんの不倫相手の赴任先。



30年前の夏、ここで下車して、落石岬まで歩いたのは、自分のユース旅史上ベスト5に入る楽しい思い出です。

終着の一つ手前、東根室は日本最東端の駅。ここから根室市街地へ向けて線路がぐいっと西へ曲がっていくため、終着駅の一つ手前が最も東の駅である、というのは、鉄道ファンのみなさんならよくご存知の通り。6月からの普通列車の観光列車化では、この駅で、観光用の停車時間が設けられることになっています。




そして終着の根室駅。



ぼくは日本最北端の駅である稚内にはしょっちゅう行ってますが、同じ「端」といっても、その遠さ、最果て感は、根室のほうがずっと上です。「果て」であることをさらに強調するのは、地元の方には失礼なことかもしれません。でも、よそ者にとっては、それがたまらない魅力です。そこに暮らす人の気持ちに寄り添いながら、その魅力を発見、発掘していくことが、花咲線の今後にもつながっていくのだろうと思います。

個人的なことでいえば、30年前、ぼくは、北海道ワイド周遊券を片手に、この辺を行ったり来たりしていたわけで、当時はそれほど意識してなかったけれど、ずいぶん遠いところに行っていたのだなあと、当時に比べればずっと根室に近い場所に暮らしている今になって、感じます。

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