熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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あのう…印税というのは

最近ぼくのまわりはちょっとした出版ブームのようになっていて、久保ヒデキさんの『定山渓鉄道』のように増刷がかかった例もあります(それにしてもこの値段の高い本が増刷されるのだからまだまだ世の中捨てたものじゃないと思います)。

そんな出版ブームの中のお一人(久保さんとは別人)が、先日、一緒にお茶を飲んでいる席で「知らなかったんだけど、印税って、刷った部数に対してもらえるんだね。売れた部数じゃないんだね」と口にされたのを聞いて、「あ、それは種村先生と同じ感想だ」と、思わず、言ってしまったのでした。



故・種村直樹さんの早すぎる自伝『きしゃ記者汽車 国鉄全線完乗まで』に、こんな一節があります。まだ毎日新聞社の記者だった種村さんが、初めての著書を出すことが決まったときのエピソード。

《初版は一万部見当、印税は図版などに経費がかかるから七パーセント、支払い時期は…このような説明が続いても、なにぶん出版業界とのつき合いなど全くなかったから、いい条件なのか悪いのか見当がつかない。どっちへ転んでも、毎日新聞社の給料で親子三人食べているのだし、本にさえなって、レジャー費が出ればよいと思った。しかし、聞くことだけは聞いておかねばならない。
「あのう…印税というのは刷った部数に対してですか、売れた部数が対象ですか」
 大森さんは、本当に何も知らないのだなという表情で苦笑いした。
「刷った部数です。売れた部数だと、こちらは助かるのですけれどね。定価はあとで決めますが、二八〇円とすれば印税は一九万六〇〇〇円、一割は所得税分として源泉徴収しますから、手取り一七万六四〇〇円です。初版は著者に二〇冊さしあげます。それ以上に必要なら八掛けで印税差し引きとなります。印税率は低いけれども、シリーズとして毎年刷り、部数で稼いでいただくシステムです」
 数字がぽんぽん飛び出して、別世界のようであった。ともかく本が出ると十数万円はいるらしい。当時の給料の手当を含めた二か月ぶん以上だから、結構なことである。》

ここに描かれているのは、ちょうど50年前の話です。それと似たような話が、自分の目の前に登場するのだから、やっぱり人生はおもしろい。
 

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この記事に対するコメント

種村先生で増刷の話と言えば、東北民鉄の旅の途中で、「時刻表の旅」の増刷の話が電話で来て、旅のパートナーの方から「書店から引上げるって話じゃなくて良かったですね」と言われたシーンが印象深いです。

定鉄の本、私も家の近くのショッピングセンターの書店で買いました。2冊あった本がすぐ売り切れて、また入荷してましたね。あれだけ内容が充実していれば3000円は高くないですね。
こんびに | 2018/02/12 10:10 AM
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