熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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稚内駅はいい駅だ(と、最近、思うようになった)

先日のブログで言及した1986年夏の種村直樹氏による稚内港北防波堤ドーム訪問記は、同年11月に刊行された『日本縦断鈍行最終列車―消えゆくローカル線に愛をこめて』の中から引用したものです。この本は、日本国有鉄道(国鉄)にとって最後の夏となった1986年8月、種村氏が、稚内(日本最北端の駅)から西大山(日本最南端の駅)へと、鈍行列車を乗り継いで6泊7日の旅をした記録です。

この旅には、ぼくも同行してました。

というわけで、この本の最初に出てくる写真の中に、ぼくもいます。


(種村直樹『日本縦断鈍行最終列車―消えゆくローカル線に愛をこめて』1986年刊)

上の記念写真で背後に写っている「日本最北端 稚内駅」の看板は、この駅舎の解体とともに消えかけましたが、2011年の新駅舎開業後は、ホームに移設されて、現在も健在です。



稚内駅が現在の形になったときは、正直、なんだかなあ、と思いました。風情も何もない複合型駅ビルになったうえに、なんといってもホームが一本しかなくて、もう、拡張のしようがない。拡張する必要がないのはわかっているにせよ、列車が一本しか入れないのでは、まるでローカル線の終着駅ではないか…

いや、まあ、宗谷「本線」といっても、実態は、ローカル線、なんですけどね(先日の天塩弥生駅を取り上げたテレビ番組でも、宗谷本線を走る普通列車の映像とともに「のどかなローカル線」みたいなナレーションが流れてましたねぇ)。

稚内駅の発着本数をみると、たしかに、ローカル線です。



今年3月の北海道新幹線開業に伴うダイヤ改正では、北海道内の在来線の普通列車は大幅に削減され(ついでに駅の数もけっこう減って)、厳しい状況になっていることは頭では理解していましたが、こうして実際の時刻表を目の当たりにすると、やっぱり、びっくりします。

でも、そんな中にあっても、「最北端の駅」の看板をホームに残してくれていたり、駅ビルの2階に(駅を眺める以外の用途があるようには思えない)展望デッキを用意してくれたりと、鉄道を観光資源として活かしていこうという姿勢がうかがえるのは、とても嬉しいことです。



できたばかりの頃は、このへんな駅舎はどうかと思ったし、駅前に設置された「最北端の線路」のへんなオブジェも好きになれなかったんだけど、本体の鉄道がこういうことになってくると、どれも、鉄道への思いが溢れているような気がしてくる。

(この辺は、近年、だいぶ、考え方、変わりました<無節操でもいいじゃない)

駅弁の種類が豊富なのも、稚内駅の嬉しいところ。



これだって、かつての駅弁文化からすれば、駅弁じゃない!と言いたくなる気持ちも、ないわけではないです。ホームで立売をせよとは言わないし、ホームにワゴン出して売れとも言わないけど(そんな光景すらもはや過去のものになってしまいました)、これでは駅ビル内の食品売り場の弁当に過ぎないじゃないか!せめて改札口が見える場所で売ってほしい!と、思わないわけでもない。

でも、列車に乗る前に、コンビニの画一商品ではないお弁当を買って持ち込めるのは、この時代にあっては、とてもありがたいことです。

だってさ、売る側の立場で考えたら、コンビニの商品に比べたら圧倒的に多品種少量生産になるのだから、やりたくないですよ、普通は。

包装にしても、最近は、かつてのように経木の箱や蓋を丁寧に掛け紙で覆ったものはほとんどなくて、コンビニ弁当みたいな容器に中身を詰めてぐるっと紙を巻いてセロハンテープで貼っただけ、みたいなのが多くて、はたしてこれが駅弁なのか?と言われると、うーん…と唸ってしまいたくなるんだけど、それでも、弁当によって異なる種類の包装紙をいちいち巻きつける手間を考えたら、そこはコンビニとはかなり違うわけで、そういうものを売ってくれるだけでもありがたい(と思わなくちゃいけない<そういうことに「昔はこうだった」とケチをつけるのはやめましょう)。

今回、ぼくが買ったのは「宗谷黒牛・帆立弁当」。



今月のJR北海道の車内誌で紹介されている新作駅弁です。



細かいことをいえば、いわゆる掛け紙ではなくて箱に近いスタイルの包材はコレクションしづらくて(笑)好きではないけれど、もう、そんなこと言ってる場合じゃないですからね。こういう弁当が、駅弁として、駅構内で売られていることだけでも、貴重です。なにしろ、宗谷本線の列車には、車内販売がない(5時間を超える列車で途中駅の停車時間もないのに車内販売がないというのはキツイです…)。

旧来型の頭で考えると受け入れがたい部分もあるとはいえ、やっぱり、駅には、賑わいが必要なのです。鉄道の利用者はごく一部だとしても、賑わいがあるから物販も飲食も提供できて、駅弁を買うこともできる。かならずしも鉄道には乗らない人ばかりだとしても、訪れる観光客がいるから、鉄道を観光資源として意識する発想が生まれてくる。

列車の本数は減っちゃったけど、稚内駅はいい駅になってきたなと思います。当地の鉄道をとりまく環境は厳しいものがありますが、「日本最北端の駅」であることをうまく活かしていってほしいと思います(が、少しネガティブなことを書いてしまうと、ホームが一本しかなくて有効長が短くて構内を出たらすぐに踏切ということは、長大編成の列車は入れないんじゃないか…ということは、カシオペアやクルーズトレイン的なものは、入れないのかも…ということに気づいてしまって、べつにクルーズトレイン的なものが来なくてもいいんだけど、せっかく「日本最北端の駅」というわかりやすさを使いたくとも限界があるというのは、なんとも残念ではあります<南千歳駅〜新千歳空港駅の配線然り、いまさらどうしようもないのですが)。
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