熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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【言葉】「もし豊田から信頼を得たいとか思ったら、その時点で負けです」

早稲田ラグビー 進化への闘争
早稲田ラグビー 進化への闘争
直江 光信

ちょっと長いですが、まずは引用。
p.149〜151から:
 二〇〇六年春。それまで一度もトップチームでの指導歴のなかった中竹竜二が、早稲田大学ラグビー部の監督に就任した。その際、もっとも反対していたのは、ほかならぬ当時新二年生の豊田将万だった。
 中竹が回想する。
「あいつ、ラグビーに関してはすごく鋭い部分がある。それで直感的に『この監督はラグビーを知らないな』と思ったんですよ。だから、なんでこんな人がワセダの監督になったんだろう、と。いわゆる普通の感覚で、僕のことを馬鹿にしてたんです」
 そして、ここがおもしろいところなのだが、中竹はそんな豊田の態度を咎めなかった。
「それであいつの人間性をとやかく言うよりも、『こいつ鋭いな』と。そういう見方をしてあげなければいけないな、と思ったんです」
 若者らしい一途な思いそのままに、豊田はストレートに感情を表現する。ミーティングでの会話は常に一方通行。中竹を監督ではなく「あの人」と呼び、あえて聞こえるように「どうせ言ってもわかんないから、オレらで勝手にやろうぜ」と言い放った。
 普通の人なら、メチャクチャむかつくと思いますよ。そう笑いながら、中竹は言う。
「人間的に僕を馬鹿にしているというより、監督しての能力があるかどうかを、あいつは常に見てるんです。僕はそこを絶対に誤解しちゃいけないなと思っていた」
(中略)
「一見、人を馬鹿にしたような態度をとるんですけど、それも勝ちに対する貪欲さの表れなんです。僕はそこを信じようと思った。もし豊田から信頼を得たいとか思ったら、その時点で負けです。あいつ、そういうところはすごく鋭くて、媚を売ってくるような人間に対しては虚勢を張るところがある。だから、一緒に勝利を目指す仲間なんだ、とだけ感じてくれればよかったんです」


この部分がずっと頭の中に残っていて、なんだろう、なんでだろう、どうしてこれが頭の中から離れないんだろう…と、考えに考えて、ふと、札幌駅パセオ西側の札幌弘栄堂書店(ここは「しょせん駅構内の書店でしょ」なんて思っちゃいけない、ものすごく商品を知ってる書店です)の新書の棚の前で、気づきました。

媚を売ってくるような人間に対しては虚勢を張るところがある、は、私も同じです。世の中には媚を売られるとへなへなとなってしまう人もけっこういるわけで、媚を売ってくるような人間というのはそういう人に取り入ったことのある、いわば成功体験を持っているから、それが誰に対してでも通用すると思って、たとえば私になんかでもそういう方法で近づいてくるのですが、私はむしろそれが見えた途端に拒否反応を示してしまいます(そして、年齢を重ねるに従って、それが見えるまでの時間は加速度的に短くなってきています)。

それなのに、自分自身は、相手に取り入ろうとして、媚を売ることをしているじゃないか!と、それが具体的にどんなときのどんなことかはもちろん書きませんが、なぜか、突然、閃いたのです。

ある目的があって、それを達成するために信頼関係ができあがる、というのが、本来あるべき姿であって、相手から信頼を得るために何かをするというのは、本末転倒というか、ピラミッドの低いレベルで達成感を得て終わってしまうというか(こういうのは図を描きながら話すとわかりやすいんだがなあ)、間違った方向にエネルギーを浪費することになってしまいかねない。それと、異端を排除することにもなりかねない。これはおそらく日本社会のもっとも弱い部分の一つで…とか始めると、話が大きくなりすぎてまとまらなくなるに違いない。

信頼を得たいと思ったら信頼を得たいと思ってはいけない。

奥歯にものが挟まったような感覚がものすごく残る文章になっちゃってますが、行間を読んでいただくということで、ご容赦ください。
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