もはや先月の話になってしまいましたが、14〜15年ぶり(たぶん)に乗った釧網本線は、やっぱり、すごかった。
14〜15年ぶりとはいえ、その間、釧網本線とまったく縁がなかったわけではなく、浜小清水と北浜の間はDMVの試験運行のときに乗っているし、その後には仕事で標茶に行ったときに釧路〜標茶間を乗ってます(どうしてわざわざ汽車で行くのか?みたいなことを言われましたけど<地元の人にとっては釧路から標茶まで列車で行くという選択肢はないんですよね)。昨年は、
釧網本線を世界遺産にという動きが始まったこともあり、ひさしぶりに全線乗り通してみようと、うまい具合に網走と釧路で仕事が発生したのでその間を釧網本線でつなぐ予定を立てていたのですが、出かける直前に台風が相次いでやってきて、釧網本線は全線運休(結局レンタカーで移動)。そのときは沿線を走りながら、いくつかの駅には立ち寄っているので、14〜15年ぶりとはいっても、なんとなく雰囲気はわかっていた…つもりだったのですが、やっぱり、すごかった。
釧路を出て、東釧路で根室本線と分かれると、まずは左側に阿寒の山々が、真っ白な姿を見せてくれます。やがて釧路湿原の中に入っていき、もうそこらじゅうにシカが出てくるし(アトラクションみたいだけど野生です)、高い樹木の上に黄色い嘴が凛々しいオオワシが止まっていて、そのうちタンチョウまで出てくる(丹頂鶴ではなくてタンチョウですから、という話は、小清水ユースでヘルパーやってるときによくしていた話です)。線路しかない湿原の中だから、道路よりもずっと野性味あふれるコースであるわけで、積雪の中にシカの歩く道があるのが見えたりする。
そのうちなんだかへんな匂いがしてくるのは、硫黄山が近づいた証拠。
これこそ、釧網本線の原点です。釧網本線が開通する前に、ここから硫黄を運び出すための鉄道が敷設されました。開通したのはなんと1887年、北海道で二番目に古い鉄道です。この鉄道(安田鉱山鉄道→釧路鉄道)は釧網本線の工事が始まる前に(硫黄相場の世界的下落や硫黄資源の枯渇を背景に)経営難で廃止されてしまうのですが、その路盤の一部は、現在の釧網本線のルートとして活用されています。
当時、硫黄山から敷かれた鉄道路線の終点は、標茶でした。標茶まで鉄道で運ばれた硫黄は「二十五石船」に積まれて、しばらく先で「五十石船」に積み替えられ、さらに「百石船」に積み替えられて釧路に送られた、というわけで、その五十石船が、昨日限りで廃止となった五十石駅の謂れでありますね。
そんな歴史を辿るツアーもあります(もう終了していますが)。
かなり興味深かったのですが、午前10時出発のこのツアーに参加すると、網走へ行けなくなってしまうので、後ろ髪引かれる思いで断念しました。なにしろ、川湯温泉10時33分発の次は、15時45分発まで、列車がないのです。
川湯温泉の昔のままの三角屋根の駅舎もいいし、駅舎内で営業を続けているオーチャードグラスも素晴らしい。いまどきの(でもないか)キハ54は川湯から緑への峠越えも速度を落とさずに快調に走り(これは本来はよいことのはずなのだがあまりに快調に走るものだから物足りなくなってしまうのはマニア気質ゆえか(^^;)、下りに入ると右手に斜里岳がドーン!そして知床連山、流氷…と続き、しかもこの日は列車に乗らないと流氷が見られない日、というのは、この日の流氷は(鉄道駅でいうと)知床斜里と止別の間でしかほぼ見られなくて、その区間で海岸線に近づけるのは鉄道だけなのでした。
その先の藻琴山に濤沸湖、オホーツク海にいちばん近い駅・北浜、などなど、もう、なんだか、こんなところに普通運賃だけで乗っていいのか?と思っちゃうほど、すごいんだなあ。惜しむらくは、たとえば右側に斜里岳が見えても、あれが斜里岳で斜里岳ってどういう山で、とか、その向こうの斜里岳とは対照的に柔らかい姿を見せてくれる山は海別岳といって、とか、そういうことって、多くの人はわからないわけで(オレは知ってるぞと自慢したいのではなくぼくはたまたまかつてよく訪れていた場所だから知っているだけです)、ワンマン運転だから車内アナウンスは難しいかもしれないけれど、なんか、そういうのを教えてもらえるだけでも、旅行者は楽しくなるし、今度は違う季節に来てみようって思うかもしれないわけで、そういうのがあればいいなあと思うのでありますね。
考えてみれば、ぼくが道内の何箇所か、同じようなところを何度も訪れているのは、最初に訪れたときに「ここはこんな場所で、違う季節に来るとあれがこんなふうになっていて」といった話をユースホステルで聞かされたからで、そういうのがあれば、絶対に、ファンづくりにつながるんです。
ということを、そのときの車内でぼんやり考えていたら、知床斜里駅から乗った「流氷物語号」で、さらにいろんなことに気づかされたのでありますが、長くなってきたので、今日のところはひとまずこれまで。