熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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「オホーツクの村」ものがたり

2018年10月刊。



半月ほど前、旅の先輩のお二人と室蘭やきとりをご一緒したとき、オホーツクの村の話になって「オホーツクの村のマークの付いたトレーナーを買った」「オレはトレーナーは買えなくてTシャツを買った」「ステッカーあったよね」「竹田津さんは今は東川に住んでるんだよね」と盛り上がりつつ、ぼくの頭の中では、あ、そうだ、この前、オホーツクの村の本をどこかで見かけたぞ…と、別の思考回路が動きはじめて、しばらくしてから、そうだ、ジュンク堂の1階だ!と思い出して、翌日、この本を買いに行ったのでした。

ぼくが「オホーツクの村」の近くのユースホステルで働いていたのは、もう30年近くも前のこと。その頃、いつも着ていたのが、「オホーツクの村」のキタキツネのマークが付いたトレーナーでした。初めてそのユースホステルに行ったとき、たまたま、地元の方(この本にも出てくる方)がエゾリス観察に連れて行ってくれるというイベントをやっていて、後になって思えば、その場所こそが「オホーツクの村」でした。

ぼくは、そのエゾリス観察をきっかけに、そのときまわりにいた人々の影響を大いに受けて、バードウォッチングをはじめとする自然観察(と野山歩き)を始めたぐらいで(それまではエゾリスとシマリスの違いすら知らなかった)、「オホーツクの村」は、ぼくの人生を変えた場所の一つでもあるのです。

でも、ぼくは、「オホーツクの村」について、何も知らなかったのだ、ということが、この本を読んで、よくわかりました。

そして、この本に描かれている「小清水自然と語る会」の設立以来の経緯は、とても勉強になります。まだクラウドファンディングなんて概念は想像すらできなかった頃に、本業を別に持つ人たちが手弁当で集まって、「オホーツクの村」をつくるべく、大きなお金を調達し、プロジェクトを動かしてきた記録は、自分たちの活動にとっても非常に参考になり、また、励みにもなります。

ぼくの知っている人も、たくさん出てきます。小清水ユースのペアレントはもちろん、木谷のおばあちゃんも登場しているのにはびっくりしました。ぼくはあの頃はわかんなかったけど、みんな、すごい人たちだったんだなあ。

 
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『鉄道快適化物語 苦痛から快楽へ』

2018年9月刊。



すごく手間がかかっている本です。手間をかけたからエライ、ということではないのですが、孫引きだらけのお手軽本と違って、著者自身が一次資料に当たって得た素材がたくさん使われていることに加え、それらを一定のテーマと時系列で整理していること、さらには整理に当たっては単純に時間軸で並べるのではなく著者の解釈を入れながらわかりやすく並べられているところに、非常に高い価値があります。こういうものを1,700円+消費税で読めてしまうのは、大変ありがたいです。

目次
第1章 列車の混雑を改善する―車体と座席スペースの拡大
第2章 客室の改善―客車の構造と種類
第3章 乗り心地の改善―軋み・騒音・振動を抑える
第4章 車内設備の改善―座席・照明・冷暖房・トイレ
第5章 等級制の変遷―三等級制から等級制廃止、そして現在
第6章 電化のあゆみ―無煙化の達成と技術の発展
第7章 サービスの改善―接客・マナー・座席指定・通信手段の変遷
第8章 速達性の改善―高速化と直通化
第9章 安全性の向上―災害・事故への対策
第10章 豪華列車の系譜―プルマンカーから私鉄の貴賓車まで
第11章 クルーズ列車の時代へ―現代の究極の豪華列車たち

これだけたくさんのテーマが詰め込まれていながら、一冊の本として成り立っている(=最初から最後までつながっている)というのがすごいです。現在では常識と考えられているようなことが、なぜ常識になったのか?が(そういうことが直接説明されているわけではないのですが)よくわかります。

さらに、ソフト面だけではなく、ハードについても丁寧に説明されているのも、とてもありがたいです。たとえば第9章「安全性の向上」には「安全を守る技術と設備」という項があって、ここには、先日の地震後にJR北海道が発表した資料の中にあった言葉「軌道変位」について(一般には「歪み」だが鉄道用語では「軌道狂い」「軌道変位」「軌道不整」などと呼ばれている、との説明の後に)軌道変位には5つの種類があることや、それがどのようなものであるかが、図で説明されています(5つの種類=「高低変位」「通り変位」「軌間変位」「水準変位」「平面性変位」)。

海外の事例が豊富に盛り込まれているのも、本書で説明されている現在の日本の鉄道サービスに至る流れの理解の一助になります。たとえば、最終章「クルーズ列車の時代へ」に付された表「主な定期船・クルーズ船と定期列車・クルーズ列車の比較」では、乗務員数に対する定員の比率の比較などもあり、「豪華クルーズ列車(クルーズ船)」という定性情報が定量的に検証されています。

鉄道趣味人が身につけておきたい教養として、強くお勧めする本です。


 

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『海馬島脱出』

稚内のクラーク書店に平積みになっていた本。



こういう本が目立つところに置かれていたりするから、稚内のクラーク書店はおもしろい。そして、応援したい本屋さんなのです。

タイトルの「海馬島」は、礼文島の北にある無人島ではなく、樺太(サハリン)のそばにある島です。「モネロン島」のほうが、わかりやすいかもしれません。



昭和20年8月15日以降も戦闘が続いていた樺太で、ソ連兵の目を盗んで海馬島から北海道へと脱出を図った人たちの手記やインタビューを集めたのが、この本です。脱出は数回にわたって、さまざまな船で、また、さまざまなルートで行われたようで(その辺は証言者や記録によってまちまちで正確なことはわかっていない由)、脱出船の中には、礼文島の船泊に立ち寄ったものもあります。

稚内のクラーク書店で買ったものの、しばらく放置(積ん読)状態だったのですが、大地震で停電した日の昼間、電気復旧を待つ以外にやることもないときに、読みました。この本に書かれていることに比べれば、停電で困っているなんてたいしたことじゃないと思いながら、読んでました。

こういう本を読むたび、ぼくは何も知らないんだなあと思わされます。北海道の人がときどき話題にする、いわゆる三船遭難事件にしても、ぼくは、恥ずかしながら、北海道に引っ越してくるまで、知りませんでした。

もはや、あれもこれもと幅広く手を出すよりも得意な分野で世の中に貢献する年齢なのだろう…と思う一方で、こういう本に接すると、やっぱりまだまだ勉強だ(そして勉強したことは次の世代に語り継いでいかねばならぬ)とも思います。

 

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「それでは国鉄はどうか」



《卒業前に父から、政治家になるつもりはあるのか、と聞かれたことがあります。絶対にやらない、と答えた私に父はこう言いました。
「そうだろうな。お前みたいに人のいい奴につとまる仕事じゃない。お前は、俺と違って、苦労していない。政治家になっても、大成しないだろうな」
その頃の私は、新聞記者に憧れていました。本を読むのも、文章を書くのも好きだったからです。しかし、「ジャーナリストは人を批判してばかりいる仕事」と考えている父に猛反発を食らいます。
 それでは国鉄はどうか。鉄道好きだったのでそう言ってみると》

そうか、石破さんの頃はまだ国鉄の採用があったのか、というのと、この頃から(本当に)鉄道好きだったんだなと(いまさらですけど)思いました。いや、べつに、大人になってから鉄道好きになってもいいんだけど。鉄道趣味がそういう位置づけになった=隠すものではなくむしろひけらかすことでプラスになるものになった=ことは、じつに喜ばしいことだと思いますから。

この本は、総裁選を前にした石破さんの政策解説本ではあるのですが、ぼくは、後半に出てくる選挙の戦い方のシステム化の話が、いちばんおもしろかったです。
 

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『真説・佐山サトル』

ぼくがこのところ寝不足になっている原因の一つが、この本です。

手間をかけて多くの人の証言を集めたノンフィクションはやっぱりおもしろい。



ちょうど去年の今ごろに出たGスピリッツのスーパー・タイガー特集の巻頭ロングインタビューの終盤で、佐山サトルが語っている《…格闘技界は自分を裏切りましたね(中略)プロレスはまた別ですよ。プロレスは裏切らなかったですから》の意味が、よくわかりました。それは具体的にはどういうことなのか?を、ひとことでまとめてしまうのは、この本に対して、失礼な気がします。そのぐらい、この本には、読み応えがあります。

こういうのを見せられちゃうと、やっぱり(電子書籍でなく)紙の本だよねと思っちゃいます。

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