熊式。

大熊一精(おおくま・いっせい)の日々あれこれです。
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中華民国八十一年

とにかくモノが溢れすぎだから捨てなきゃいけない現状、封印されていた箱に手をつけたがゆえに、かえって散らかるという妙なことになっている我が家ですが、そんな中で、また、すっかり忘れていたものが発見されてしまったのであります。

台湾の鉄道に乗りに行ったのは、1992年3月のこと。



ふらっと一人で行きました。この頃はまだ、男性が台湾に行くというと、ニヤニヤしながら「いいところですよ」などと言ってくるオジサンがいるような時代でしたが(ぼくは台湾というのがそういうところだというイメージがなくてそんなことを言ってくる人が少なからずいたことに驚いたのですが)、ぼくの目的は阿里山鉄道。

宮脇俊三『台湾鉄路千公里』(1980年)から:
《「阿里山鉄道」について知ったのは中学一年か二年の頃だったと思う。当時の台湾は日本領であったから本土に準じる詳しさでその地理を教えていた。しかも私が習った地理の先生はよく旅行する人で、阿里山鉄道にも乗っており、「阿里山鉄道のループ線はですな、…(中略)…それにですな、勾配のキツイことといったら、坐っていても体がこう、こう、こう…」と、大きくのけぞって見せたのである。この先生の話は、すこし大げさで、阿里山鉄道の「独立山ループ線」は正しくは三回であり、再急勾配は一〇〇〇分の六五であるから、教室の天井に向ってのけぞって見せるほどのものではない。しかし阿里山鉄道が世界的にも有名な山岳鉄道であることに変りはなく、この話を聞いたとたんに私は、乗りたくて乗りたくて堪らなくなった。》

これを読んで阿里山鉄道に乗りたいと思ってわざわざ台湾まで行ったというのに、阿里山鉄道は、どうも記憶がはっきりしない。途中から右も左も真っ白になっちゃったのと、翌朝がものすごく寒くて参ったことぐらいしか思い出せない。

むしろ記憶が比較的はっきりしているのは二水〜車埕間の集集線です。集集線というのはいわゆる盲腸線で、観光客が訪れるようなところではないのですが(今は違うかもしれない<台湾は鉄道観光文化が定着しつつあるようですから)、これも宮脇さんの本に載っていて、かつ、行きやすかったから、乗りに行きました。今みたいにインターネットの情報なんかない時代、『地球の歩き方』が海外情報のほぼすべてみたいな頃ですから、宮脇さんの本は、ガイドブックみたいなものでした(実際には、宮脇さんの台湾旅行から10年以上の間に台湾が大きく変わっていて、「あれっ?」と戸惑うこともたくさんあったのですが)。

その頃、南廻線は、線路はつながったけれど正式開業はしていないという、へんな状態でした。いま思えばどうして乗らなかったんだろうと不思議なのですが、当時はまだ新幹線はないどころか、東海岸の台東とか花蓮に行く路線は762mmから1067mmに改軌されてまだ間もなく(もちろん非電化)、一周しようと思ったらものすごい時間がかかったから、限られた日程では無理だと諦めた…のか、それとも、普通に観光もしたかったのか(故宮博物院はすごくよかった記憶があるから、鉄道に乗りまくろう!ということではなかったんじゃないかと思う)。

当時の南廻線の時刻表。正式開業してないから「臨時運行」として、1日1往復だけ走ってました。高雄8時発→台東11時53分着、台東13時35分発→高雄17時29分着。



もしこのときに高雄8時発に乗っていたとしたら、台東からは12時52分発の自強号に乗り継いで、台北着が18時56分。高雄に泊まればそんなに難しい行程ではないので、どうしても乗りたければ、故宮博物院なんか行かないで乗ってたんじゃないかと思う…と考えると、やっぱり、それほど鉄道にはこだわりがなかったのかもしれない。今だったら、故宮博物院には行かなくても、南廻線や高雄の架線レス路面電車を選ぶと思うんだけど。
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広田泉写真集「ここから始まる。」



例によって最初の情報源は編集長敬白(2011年7月8日)です。通信販売で購入しました(というかそれ以外の購入手段はないんですけど)。

広田泉さんによる東日本大震災後の鉄道被災現場の記録、ですが、瓦礫の中で運行を再開した三陸鉄道の写真もあるので、かならずしも凄惨な写真ばかりではありません。なにより、最後のページにまとめて掲載されているみなさんの笑顔がすばらしい。まさにタイトルの通り「ここから始まる」という希望を感じさせてくれる写真集です。

購入はこちらから→鉄道写真.com
(購入申し込みをして、代金を銀行振込すると、写真集が送られてきます)

ちょっと高いですかね?「この写真集の収益はひたちなか海浜鉄道と三陸鉄道の復興支援のための寄付になります」だそうですから、まあ、いいじゃないですか。いや、でも、そういうことを抜きにして、写真集そのものだけでも、十分に、お値段に見合う以上の価値はあります。

広田泉さんのブログ→自分たちができること。
(書店売りすると寄付にまわせる分が少なくなるのであえてこういう販売形態を選んだことなどが説明されています)

嬉しかったのはヤマトのメール便で送られてきた写真集に、おまけがたくさんついていたこと。とりわけ、上の写真にもあるように、手書きのメッセージカードが入っているのは、感謝感激です(こういうのを1枚1枚書くって、かなり面倒ですからねえ)。しかも、これとは別に、8月から9月にかけて札幌のキヤノンギャラリーで開催される写真展の案内も、手書きで入ってまして、そりゃ宣伝だろといわれればそれまでですが、でも、購入者である私のことがちゃんと意識されているのは、やっぱり嬉しいです。

最後のページの笑顔は、笑顔なんだけど、眺めるたびに、ぞくぞくしちゃいます。



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福島交通の飯坂電車に乗ろう

自分が生まれた福島県を応援したい+電車が好き、となれば、これははずせない。

福島交通−飯坂電車



福島駅と飯坂温泉駅の間を単純に往復すると720円なので、途中、どこかで一度でも下車すると元が取れる。もっとも、応援が目的であるならば、80円ぐらいは寄付したっていい(というつもりだったのだが、当日、わりと早起きできたので、途中下車して元を取った<いちいち言い訳がしつこいって(^^;))。

こんなのももらえる。



福島交通飯坂線には、まだ電車が福島交通カラー(ベージュ地に赤いライン)だった頃に、乗ったことがある。飯坂温泉で日帰り入浴したような気もする。それから少なくとも20年以上経っており、記憶はほとんど残っていないから、新鮮だった。



飯坂温泉の温泉街は昭和の風景。



昔ながらの団体旅行が似合う雰囲気で、福島交通飯坂線の応援を兼ねてみんなで泊まってみたらおもしろい、と思ったんだけど、みんな、って、誰だ?

とりあえず桜水駅で下車した。



ここはとてもよい駅だった(以前にも下車しているはずなのだが…当時は現在ほどうるさくなかったからか、「わざわざ東京から来たんですけど」と言って車庫を見学させてもらった記憶はある…のだが、駅そのものの記憶はない<現在と関心の方向が違ってたんだな)。出札窓口があるってだけでも、とってもすばらしい。駅舎の形も、いかにも地方の民鉄、って感じがいい。

曽根田駅。福島駅から0.6km。



この雰囲気もいいんだけど(残念ながら出札窓口は無人なのだが)、駅舎がさらにいい。



地図を携行した以外には予備知識なしで行ったのだが、福島から乗ってこの駅舎を見て、おお、これは降りなければ!と思ったのだ(といっても、さすがに福島から600メートル乗っただけで下車というのはいかがなものか、なわけで、帰りに下車して、福島駅まで歩いた)。

ほしかったわけではない(ほとんど寄付感覚)。



あまり売る気は感じられなかったんだけど(^^;)、支援、ってことで。




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JR北海道711系電車 旧塗色

6月10日から、711系電車のうち1編成が旧塗色に戻して運転されているのだそうで、昨日の帰り、東室蘭駅での乗り換え時にたまたま遭遇した。



実物を見たときは「ずいぶん赤が強いなあ」と思ったのだが、こうして写真にしてみると、さほど違和感はない。私が北海道通いを始めた頃はすでに「くるくる電車ポプラ号」の時代であり、旧塗色のイメージは鉄道雑誌などで見た「急行かむい」の写真だったりするわけで(初めて北海道を訪れたときはまだ旧塗装だったから実物を見てはいるはずなのだが)、新しい旧塗色車両をかつての旧塗色車両と比較するのであれば、私は写真を基準にすべきなのだろうと思う。

見た目の色の印象は光の具合(≒季節、時刻)でもかなり変わるし、そもそも「塗ったばかりの旧塗色」の実物を見たことがないのだから、「なんか違うような気がする」の感想は(下の写真を見るとまた頭をもたげてくるのではあるが)封印することにしよう。


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今尾恵介ブーム



約1年前の私には日垣隆ブームが起きていたのだが(2010年5月4日のブログ)、目下、今尾恵介ブームなのである。『多摩の鉄道沿線 古今御案内』(2008年刊)があまりにおもしろかったもので、刊行年がかなり前のものを含めて、けっこうな数の今尾氏の本を注文してしまった。書店の店頭で探すのは大変な(まず見つからないであろう)本が簡単に買えてしまうのだから、じつに便利な時代になった(2008年にけやき出版から出た本−『多摩の鉄道沿線 古今御案内』−だって、amazonがなかったら、たぶん、まだ読んでないと思う)。

地図の本といえば、最初に頭に浮かぶ名前は、堀淳一氏だろう。北海道に住んだこともなかったのに(今は住んでますけど)北海道内の地理にやたら詳しくなったのは、堀氏の著作によるところが大きい。しかし、いくら好きだとはいっても、北海道は広いし、私の好みは北海道の中でも偏っているから、堀淳一氏の本の中には、ピンとこないことも少なからずある。

その点、今尾恵介氏の『多摩の鉄道沿線 古今御案内』に描かれている場所の多くは、なじみのある場所なのである。掲載された新旧の地形図を見比べながら、今尾氏の文章を読みつつその風景を想像する、というのが、この本の正しい読み方なのだろうが、その場所の現在の様子は、掲載された現在の地形図を読まなくとも、だいたい、わかる。だから、さらっと読み流すのではなく、今尾氏が文字にしていないところまで、地形図を眺めて、いろんなことを発見して、ほくそ笑む(<気持ち悪いか?)。

こんど帰省した際には、今尾氏の過去の本(何冊かあったはず<もしかすると今回注文した本の一部はダブっているんじゃないかと危惧)や、南武線の歴史の本などなどを、札幌に持って帰ってこようと思う。

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